木の工房 風

ひとこと

ワクワク感を感じさせる作品作り           ”新付加価値の創造”(2017/1/3 T.Hayashi)

パン職人:成瀬正(その2)

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成瀬は、自分のふるさとでパン屋を開きたいという熱意ある若者に限り、弟子として受け入れている。

その弟子達には、いつも「惰性を許さない」ということを教え込んでいる。
厨房はいつも張り詰めた空気が漂い、スタッフの表情が緩むことはない。

パン職人の仕事は、毎日同じ作業を繰り返す仕事なので、ややもすると作業が惰性的になることがある。しかし、自分の焼いたパンのわずかな違いに緊張感を保ち続けられなければ、進歩はしない。そして、その少しの違いが、あとで大きな違いになるのだという。
だから、いつも緊張感を持ち、一瞬の惰性も許さないことを、自分にも弟子たちにも求め続けている。

パン作りは、酵母による発酵と熟成をどのぐらい正確にコントロールできるかに掛かっている。パンの膨らみはもちろん、味や香りも大きく違ってくる。なので生地作りには、最新の注意を払っている。
生地の発酵具合を知るのは、自らの五感である。視覚や嗅覚、触覚を使って、窯に入れるタイミングを計っている。

職人が技を覚えるために大切なのは、「目付け」だという。
先輩の作業の、どこに目をつけているか(どこを見て、どう感じているか)。その作業のポイントを押えることができなければ、自らの技術のどこを改めるべきかが分からず、ひとり立ちしたときに、自分で技術を磨いて成長することが出来なくなるからだ。

職人の本当の勝負は、独立した後から始まる。
自分の作るパンの評価を1人で受け止め、日々、自らの技術を磨いていく果てなき道。そのとき頼りになるのは、自分で自分の技術を評価し、ワザを磨いていく、厳しい目である。
そのために「目付け」は職人の大切な基本であるという。

地元高山で店を開店して4日目に客足は急に減った。
続けることで理解される、自分の作るパンをどれだけの人が理解してくれるか・・・いろいろ試行錯誤しながら都会との違いを感じていた。
そんな時、パンの本場フランスに評判の店があるから見に行こうと誘われた。
フランスの店には、いままで見たことも無いパンばかりが並んでおり、驚きの連続であった。ふるさとの人のためにパンを焼いていたフランスの有名パン職人。こんなパンを食べることのできる地元の人は幸せであると感じた。

帰国後、地元でどうしたらやっていけるのか・・・自分の仕事に責任と誇りを持ち、美味しいパンを地元飛騨高山で食べてもらいたい思いで懸命にパン作りに励み、ようやく認められるようになった。
こうして6年後、パン作りで世界3位の成績を手に入れた。

パンは生きもの。毎日が勝負。天候条件などを考慮し、パンの練りや、麹に気をくばり、焼き時間を調節する。一時たりとも気の抜けない仕事の現場である。

自分の腕に過信することなく、当たり前に出来ることが、まず大事。
そのためには、基本の技を磨く日ごろの精進が大切である。
そうすれば、地方であろうとも勝負は出来ると成瀬は思った。

「パンは難しい。だから面白い」という。




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