木の工房 風

ひとこと

ワクワク感を感じさせる作品作り           ”新付加価値の創造”(2017/1/3 T.Hayashi)

画家・諏訪敦氏

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6/26の日曜美術館で取り上げられたのは、写実画家の諏訪敦氏でした。

初めて知った画家ですが、写実画家としては以前に野田弘志氏が放送されましたが、ご両人とも写真以上に存在感と感動を与えてくれるという点では同じですが、今回取り上げられたテーマは「亡き娘を絵画で蘇らせてほしい」という依頼に対して、半年に渡り、困難なテーマに挑む、画家の苦悩と完成までの軌跡を追った内容でした。

独自の細密描写の写実絵画で注目されている新進気鋭の画家なんだそうです。
舞踏家・大野一雄を2度にわたって長期取材し、大野氏の内面に迫る連作を描いてきた映像も紹介されていましたが、そんな諏訪氏に来た依頼は、事故で突然、娘を失った両親の「亡くなった娘を絵画でよみがえらせてほしい」という願いに応えるため、僅かな手がかりで独自の写実表現に挑んでいく。

なぜ写真ではなく、絵画なのか?

すでに亡くなっている方を描くのですから、参考にできるのは残された写真、遺品等々とご両親から語られた在りし日の娘さんの話。ご両親をデッサンすること、また母親の頭を触って娘さんの骨格等の情報を自分の体に取り入れる作業からはじまった。
ご両親は、絵画で生気のみなぎった生まれ変わった娘さんを見たいというのが希望だと思うが、自分としては、現世の時間を卒業し、別の世界、時間軸で生きている娘さんを描きたい・・・ということで娘さんの着用していたブラウスと、両親が贈った腕時計を腕から外そうとしている(=現世との別れ)少し寂しい表情の娘さんを描いた。
しかし、父親とのメールのやり取りで「ご両親は、まだ娘さんは死んだとは思っていない」ことを強く感じた。
これでは、ご両親の思いに応えられないと、悩む。

大幅に描き直すことを決意し、描いた絵の上から白の絵の具ですべて描き消した。

ご両親に最初に会ったときに、娘の死を受け入れられなくて、むきになっていることに感動を覚えたことを思い出し、思い出ではなく、記憶に近づくことを考え、構図も変えて描き直し始めた。
時計を外すポーズから持っているポーズに変えたが、手の表情が掴めない。(写真はVサインばかりで質感が掴めない)
そこで、義手を専門に作っているメーカーに娘さんの写真等の情報を渡して、義手を依頼して手の形、質感を確かめた。
それでも、家族の心の空洞をどう埋めるか、また家族の思い出を変えてしまわないかということが、心配になり、「生と死を考える遺族会」を訪れて、ご自分達の子供を亡くしたときの話を聞く。そこには、亡くなった娘さんのお姉さんが描いた「妹の絵」があった。それは素人さんが描いた絵なのでプロのようには描かれてはいないが、「これが彼女だ」と言えるものだそうだ。
そこで、教えられたことは「自分がいままで受けた娘さんへの思いを素直に描くこと。ご両親の知らない他人の目から見た娘さん・・・決してご両親は、そっくりなものが欲しいわけではない」ということであった。

腕時計を手にした写真にはないポーズ、笑顔になる前の澄んだ眼差しと、ほのかに赤味がさし生気を宿している表情。時計はご両親の大切な思い出である。

完成した絵画を見たご両親の感想は「架空が現実の世界に下りて来て、写真とは違って感動するものがある。目、口が語りかけてくれる。本人が居るような思いにさせてくれる」と大変感謝されていた。

これらは、生前の娘さんを知らない画家だからできたことであり、被写体が不在だからできた創造が、埋まらない心の空洞を、探求された情報を細密な写実描写することで埋めることが出来た。

素晴らしく凄い才能である。
これが物事を徹底して探求するプロの技であることに感動しました。

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